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大分地方裁判所 平成11年(行ク)1号 決定 1999年3月29日

申立人

大分県知事

平松守彦

右申立人代理人弁護士

内田健

本案事件被告(被参加人)

平松守彦

本案事件被告(被参加人)

外山邦夫

本案事件被告(被参加人)

利光一義

本案事件原告

永井敬三

外二名

主文

当庁平成一〇年(行ウ)第一四号県職員野球観戦旅費返還請求事件につき、申立人を本案事件被告らのために参加させる。

理由

第一  本件申立ての趣旨及び理由は別紙一参加申立書に、本案事件原告らの意見は別紙二「行政事件訴訟法による参加に対する意見書」に各記載のとおりである。

第二  当裁判所の判断

一  本案事件は、本案事件原告ら(以下単に「原告ら」という。)が、大分県総務部職員らの大阪市への出張の際に大分県から支出された旅費につき、本案事件被告(以下単に「被告」という。)平松守彦(大分県知事)及び同利光一義(右支出当時、同部財政課主幹兼総務係長。以下「被告利光」という。)に対し右支出に関与した職員として、また被告外山邦夫(右支出当時、同部部長。以下「被告外山」という。)及び同利光に対し右支出の相手方として、大分県に代位して、右旅費相当額の損害賠償又は不当利得返還を求めた住民訴訟である。

ところで、住民訴訟における行政庁の訴訟参加(地方自治法二四二条の二第六項、行政事件訴訟法四三条三項、四一条一項、二三条)の制度は、財務会計上の行為をし、又はこれに関与した行政庁を訴訟に参加させ、その有する訴訟資料・証拠資料を法定に豊富に提出させることによって、適正な審理裁判を実現することを目的とする制度である。

そして、一件記録によれば、申立人は、右旅費の支出負担行為及び支出命令を行う権限を法令上本来的に有し(地方自治法一四八条一項、一四九条二号)、大分県事務決裁規程四条一項別表第一の六、七により、右財務会計上の行為につき大分県総務部財政課総務係長であった被告利光に専決処理させており、同被告の右専決処理について、これが違法に行われることを阻止すべく同被告を指揮、監督する権限(同法一五四条)を有する行政庁であることが認められる。このような立場にある申立人を本案事件に参加させることにより、前記訴訟参加の制度の目的に沿う結果の実現を期待できることは明らかである。

また、一件記録によれば、原告らは、被告利光が前記総務係長として専決処理した支出負担行為及び支出命令の違法性を主張し、被告らはいずれもこれを争っていることが認められるところ、前記の訴訟参加の制度の目的を実現するためには、右財務会計上の行為の専決処理についての指揮監督権限を有する行政庁を、右行為の適法性を主張立証する側に参加させることが相当である。

したがって、申立人を被告らのために本案事件に参加させることが必要であると認めるのが相当である。

二  原告らは、被告らは個人であって「行政庁」ではないから、行政庁相互の協力、統一を旨とした行政事件訴訟法二三条一項による参加を論ずる余地はないと主張するが、前記認定した住民訴訟における行政庁の訴訟参加の制度の目的に照らせば、本案事件のような財務会計上の行為に係る当該職員及び相手方に対する損害賠償・不当利得返還の代位請求訴訟においても、訴訟資料等を豊富に提出させ、適正な審判を実現させる必要がある点では、被告が行政庁である場合と同様であり、代位請求訴訟の被告が行政庁ではないことをもって、右制度の適用を否定することはできない。

また原告らは、本案事件の争点に関わる訴訟資料・証拠資料については、既に原告らが情報公開条例を活用して豊富に提出しており、また申立人が主張する大分県総務部等の関係部局の総合的な知識、経験、資料等については、被告外山、同利光がその職務等に照らし自ら十分な知識、経験を有しており、更に右資料等については、公文書公開請求あるいは調査嘱託、文書送付嘱託等裁判上の手続による意見照会などの手段によって入手可能であるから、行政事件訴訟法二三条の「必要性」が存在しない旨主張する。しかし、一件記録によれば、本案事件において現在までに提出されている前記争点に関わる証拠資料のうち、申立人が主張する、① 服務規律の保持及び綱紀粛正が問題となり、各関係部局に対する行政指導が必要となるに至った経過及び大分県総務部としての対応の詳細、② 議員野球応援の必要性判断の前提となる議会と首長との関係についての従前からの経過、③ 舞洲アリーナの施設の視察・調査の必要性判断の前提となる大分県での国体開催の理念とそれに基づく計画の内容、準備の進捗状況及び今後の展開等についての資料は十分提出されておらず、これについての関係資料を、被告ら個人よりも、大分県総務部等の関係部局及び右部局の補助職員を指揮監督する行政庁である申立人が豊富に有していることは明らかである。そして、原告らの主張する手段の行使によっても、被告ら個人が右のような訴訟資料等を自由かつ容易に入手し得るものでないことも明らかであり、また、そのような迂遠な方法を採るよりも、申立人を参加させる方が、前記行政庁の訴訟参加制度の立法趣旨に沿うものである。

したがって、原告らの主張はいずれも採用することができない。

三  よって、申立人の本件申立てには理由があるから、これを認めることとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官一志泰滋 裁判官山口信恭 裁判官大西達夫)

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